2015-03-25

記念の駄文


(さすがに時代を感じさせられてつらいね!)


わたしが29のときは、熊本に住んでいた。
20代は販売の仕事をずっと続けてきたので、夜も遅いし、いそがしいしで、
「そうか、最後の1年くらいは、家のことをもうちょっとやりたいな」
なんて、やはりどこかで区切りをつけたくなり、意を決して退職。
最初のうちは、パンを焼いたり、裁縫したり、
今までやりたくてもやれなかったことを、順番にやってそれなりに充実していた。
ふつう、結婚5年にもなって、仕事をやすんだ、となると
そろそろ子どもでもできるんじゃないか、ってみんなおもっていたのかもしれないけど、
わたしがはらんだのは子どもではなくて、
「うつ」という、あたらしい自分だった。
忘れもしない、ちょうど10年前の、30歳の誕生日、
首をしめられて死にそうな痛みを感じ、病院で生まれてはじめて点滴をうけていた。
誕生日に、こんなことになるなんてひどいよ。
入院したほうがいい、と先生が大きな病院に連絡してくれたけど、
田んぼのなかの一本道を、自転車をひっぱって、のろのろ家に帰ったっけ。

だから、きょう、こうやって家にいて、まあまあ元気でいられて、本当によかった。

あれからの10年間は、「闘病」というより「学病」。
目に見える病ではないぶん、自分自身とのはなしあい、折りあい、認めあい、
そして確かめあいの作業の連続だった。
自分を責めて、傷つけ、いっぱい泣いて、そしてなぐさめ、許した。
自分を大切にする方法を、病気からたくさんたくさん、学んだ。
つらかったけど、なんて濃厚な10年だったろうとおもう。

この1年は、結婚してからいちばん、夫と一緒に過ごす時間が多かった気がする。
わたしのからだのことを考えて、今年転勤族を卒業したのだが、
次の仕事がなかなか決まらず、ばかみたいにずっと、2人でいた。
今までは忙しくて、あんまり家にいることがなかったひとなので、
まるで埋め合わせしているか、定年後の練習をしてるみたいな毎日だった。
いっぱいしゃべって、飲んで笑って、ときどき2人で泣いた日もあったっけな。

これからの10年は。
おじさんおばさん、2人でつつましく、楽しく暮らしていけますように。
やっと始められたお店を、一日でも長くつづけられますように。
感謝の気持ちを忘れずに、まあまあ元気に、年を取れたらいいなあ、とおもう。
みなさん、いつも本当本当に、ありがとうございます。