2019-07-15

ゆきてかえらず

音楽評論家でありライターの長谷川博一さんがお亡くなりになられたとの事。
ここ数年は、ご病気を患われていた様で、あまりに早いその訃報に驚きを隠せません。

きっかけは、20歳位の頃バイトしていたCD店の社員のSさんだった。
(しょうもない話ですが)当時の自分が勝手に、他の先輩・同僚バイトに音楽知識や学歴を引け目に感じ、ひねくれていた事が多分バレていたのかも。
Sさんには、随分気にかけてもらったと思う。
今の様になんでもかんでもアルバムが再発されたり
輸入盤が手に入る時代では無かった時に
「Dexy's Midnight Runnersは2ndも良いけど1stだぞ」とか
「『Pet Sounds』再発されるから、それは買うといいぞ」とか
決めゼリフは「きっと池田も好きだぞ」

そんなSさんからの推薦もあり
出会ったバンドのひとつに山口洋率いるヒートウェイヴがあった。
正直バンド名がちょっとなぁと敬遠していたと思う。
しかし、一度のめり込んでしまった僕の中で『ヒートウェイヴ』という音楽・言葉その他全てが爆発してしまった。
何度もライブに通った。
Sさんとも数回ライブにご一緒させて頂いた。

そんなある日「今度ライターの方と酒飲みに行くけど一緒に行かないか?」と
Sさんからお誘いを受けた。
「その方もヒートウエイヴのファンだし、ロックのライターをされてる方だから」
「きっと池田とも話があうぞ」

そして紹介して頂いたのが長谷川博一さんだった。
ヒートウエイヴの事はもちろん佐野元春についてや、長谷川さんが上梓された『Mr.OUTSIDEーわたしがロックをえがく時』について
後に上梓される予定の『きれいな歌に会いにゆく』のさわりなど
刺激的な話を、たくさん教えてくれた。
すっかり良い気分になられたのか、最後は女子プロレスラーの(たくましさ・存在・プロレスに向き合う姿の)美しさを力説されていたのが忘れられない思い出だ。

そんなご縁もあり
その後も、数度三人でライブやお食事に、
更には、ヒートウエイヴの山口洋さんにもご紹介頂いたりした。

自分が、バイトを辞め、違う会社に移ってしまって以降
Sさんにも長谷川さんにもお会いする機会はなくなってしまいましたが
当時の事は、本当に素晴らしい思い出です。

『ミュージック・マガジン』2011年5月号の
「Points of View」というコラムページは
長谷川さんとは、どういう考えの方かを知る事ができ
且つ、手に入れやすいと思いますので機会があればご一読をお勧めいたします。

「なんだ言うほど知り合いでもないじゃないか」
そうなんです。
それでも20歳の頃、このお二方そしてヒートウエイヴに受けた影響は
47歳になった今でも音楽を聴いたり、何か書いてみよう、伝えてみようと言う
欲求・探求の気持ちを忘れない半永久的なガソリンを給油して頂けたと
心から感謝しております。

長谷川博一さん
心よりご冥福をお祈りいたします。

『悲しみは人に告げず
この胸にしまっておけるなら
橋を渡り河を越え
永遠の旅人よ
想いは
ゆきてかえらず』

ヒートウエイヴ/ゆきてかえらず